男は邪魔!

という本を読んでみた
Jun Oson 2025.07.08
誰でも

Xで「男は邪魔! 「性差」をめぐる探究 / 高橋 秀実 (光文社新書)」という書籍の情報が流れてきた。なかなか強烈なインパクトのタイトル。でも直感的に妙にしっくりくる。何が?おそらく、我々"男"を取り巻く現在の状況だ。

先に言っておくと、自分はフェミニストでありたいという気持ちを持っております。…随分と歯切れが悪い物言いだけど、そうなのだ。「フェミニストだ」とは到底言いきれない。そんなことを言ったら、まず自分のことをよく知る妻から「フッ」と鼻で笑われるだろう。あと、差別しているほうは意外と気づかないもので、知らない間に長年刷り込まれてきた「男とはこういうもの、女とはこういうもの」という感覚で判断していることが多いと思うから、というのも理由として大きい。

こういう異性に対する態度というのは時代や家庭環境に大きく起因すると思う、たぶん。うちの父は比較的ニュートラルだったと思う。家事は一切しなかったけど、その代わり母は専業で主婦をしている期間が多かったと思う。思う、ばかりだけど、子ども目線なので言い切ることが難しい。でも少なくとも「俺は男だぞ!偉いぞ!」とか「父親に向かってなんだ!」みたいな態度を家族に対して取ることは一度もなかった。母に対して怒鳴っている姿をみたこともない(逆もそうだけど)。

そんな家庭で育ったので、「女なんて」とか「男は偉い」なんて価値観は持ってないと思う(当然か)。ただ、それでも昭和の生まれなので、知らないうちに「男が食い扶持を稼ぎ、女は家庭を支えるものだ」みたいな感覚は持っているのかもしれない。「わたしは家政婦じゃないのよ?」と、今でも妻によく注意される。

本の話

「男は邪魔!」、このインパクトのあるタイトルに惹かれて、早速電子書籍で購入してみた。著者が男性というのもいい。異性である女性が「男は邪魔!」とボロクソに書くと角が立つけど、同性であればボロクソ書いてもいい。

内容は終始、いかに男が能無しで、邪魔で、ゴミか、ということが書かれている(笑)。専門家や幼稚園児、その母親などにインタビューして、男は生まれながらにして能無しであるかということが、面白おかしく書かれている。

作中で著者の高橋さんは反論する。「役立たずというけど、家事も手伝ったりするよ?」と。すると、この本の中で非常に快活に、シンプルに、強く、夫に言葉を浴びせる、妻が答える。「それはあなたが散歩に出たいからでしょ。全然助けになってない。本来は私がやったほうが早く、正確だ。男は邪魔だ」と。けちょんけちょんだ(笑)。「あなたもやってくれてるとは思うけど…」という中途半端なエクスキューズはない。

自分はこの手の本は読んだことなかったのだけど、ここまでけちょんけちょんに言われと、むしろ爽快な気分にさえなった。著者の高橋さんの「そんな〜トホホ」という軽やかな態度がいいのかもしれない(笑)。

いや、ほんとに"男"のいいところって何?

この本を読めば読むほど、いかに男が能無しか、ということが浮き彫りになってくる。男に能があるとしたら「目標に向かって一直線に進む力」だろうか?そのためには周りも蹴落とす。現代でいえばそれは仕事を遂行する能力。でも、これは女性だって普通にできる。女性はやろうと思えば、仕事も家庭も人付き合いも自分磨きも美容も、なんでも並行してできるけど、男には無理。せいぜい一個か二個だ(笑)。しかも「自分のことしか考えることができない」という、とても大きな欠点を持っている。そうなると、仕事(稼ぐこと)を任せるのが合理的だろう。

命をかけて獲物を狩る必要があった時代や、命をかけて隣国と戦う必要があった時代なら、命をかけていることを考慮して尊敬を得られただろう。どんなに村で無能だったとしても「男はすごい(命をかけてるから)!」と言ってもらえたかもしれない。でもそれ以外に「男はすごい!」と言ってもらえる根拠はない。よく近年まで維持したものだ。実際にはまだまだとはいえ、男女平等が大声で叫ばれる時代も過ぎて、女性が社会で活躍したり、「男のほうが優れている」なんて大声で言えば叩かれる時代になってきた。男女が同じような活動をするようになると、男女の能力差が全くないことが明白になった。

自分の周りの男たちは家庭のこともしっかりやっている(自分が見る限り)。地元の男友人たちもやってるかな、当然のことのように。もうそんなことは当たり前の時代。その上で「邪魔だ」と言われているのだから泣けてくるけど、仕事のことはまだしも家庭のことは役に立たないんだろうなぁ。

でも、昔の男たちが必死に築いた幻の城の中で、裸の王様状態でふんぞり返っているよりよっぽどいい、と思う。幻の城を出てしまえば、"比較的力持ち"、"目標に向かって突き進む"という長所くらいしかない"男"なのだ。でももし「邪魔だなんて、言い過ぎだろ!」と感じた男性がいたら、ぜひ一度この本を読んでみてください。価値観がガラッと変わるかも。

最後に。自分はその"男"のバカなところがキュートだと思うし、"女"の賢いところが美しいと思う。

無料で「Jun Oson News」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら