『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を観た

アメリカ内戦の話と聞いてピンときて、A24が制作を手掛けたとなったら観るしかない!
Jun Oson (アーティスト) 2024.11.08
誰でも
(C)2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

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実際にありそう感がすごい映画

映画自体は好きでよく観るのだけど、映画館というのは昔ほど行かなくなって。とっても久しぶりに映画館で『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を観てきました。

予告で観て「ついにアメリカが内戦に!」という内容にかなり心惹かれたのです。例えば「ゾンビにアメリカが支配される」とか「宇宙船がワシントンの上空にやってきて…」とかだと完全なフィクションでありエンタメですが、「アメリカが内戦に突入して…」というのは現在のアメリカ(いや、アメリカに限らないのか?)を見ている限り全然ありうるので、悪い冗談を実写化したかのような想像をしました。

このニュースレターを書いているのが2025年11月8日。つい先日、アメリカの大統領選挙の決着が着いたところです。トランプさんが勝ちました。思わずこの映画のことを思い起こしました。

自分が明確に覚えている範囲ですが2016年に初めてトランプが大統領になったとき、「まじか…」とビックリしたものです。下品で差別的で攻撃的なこの男が大統領に選ばれるのか、と。と同時に「大統領としての品格など問われないくらい大きな問題がアメリカにはあるのかも?」とも思い至りました。しかもまた今季トランプが選ばれました。症状は相当深刻なのかもしれません。民主主義の代表と言っても過言ではない大国アメリカ。そのアメリカが壊れかけてる…のか?と非常に不安になります。

この映画のバランス感覚、好き

そんな壊れかけてるのか?というのを映画化したのが、この『シビル・ウォー』だと思います。僕が好きな映画をいくつも手掛けているA24が制作しました。主演のキルスティン・ダンストは実はとても大好きな俳優さんです。『ヴァージン・スーサイズ』とか『エターナル・サンシャイン』の頃は個性的なキュートさがあって最高です。そして今回のキルステン・ダンストも地に足をつけて歳を重ね、貫禄が出ていて素晴らしかったです。

連邦政府から19の州が離脱したアメリカでは、テキサス州とカリフォルニア州の同盟からなる「西部勢力」と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。就任3期目に突入した権威主義的な大統領は勝利が近いことをテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。戦場カメラマンのリーをはじめとする4人のジャーナリストは、14カ月にわたって一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うべく、ニューヨークからホワイトハウスを目指して旅に出る。彼らは戦場と化した道を進むなかで、内戦の恐怖と狂気を目の当たりにしていく。

基本的に戦争(内戦)を描いているので戦闘シーンがけっこう入っています。自分はIMAXレーザーなるもので観たので迫力が半端なかったです(笑)。何度ビクッ!と体を硬直させたかわかりません。戦闘シーンから同じアメリカ人に火をつけたり、吊るしあげたり…分断して「戦う」と決めるとこうも残酷になれるのか…。このあたりは"アメリカ人"という括りではなくて、"人間"という印象が強かったですね。人間の残虐性といいますか。

戦闘シーンで緊張感が続くと若干辟易してきます。気持ちがもちません。でもそんな時、アメリカのHIP HOPやカントリーが絶妙なタイミングで挿入されるのです。さすがだと思いました。

この映画中、取材チームに最も緊張が走るのが、なんの目的かわからないけど内戦の混乱に乗じて人を殺しまくっている男たちと対峙したときだと思います。政府軍でも対立する西部勢力でもなく「お前はどんなアメリカ人だ?」と聞いてきます。そして純粋なアメリカ人でないと判断されると射殺されるのです。その男たちのそばには大きめの穴が掘られていて、ショベルカーで無造作に死体が積まれているのも見えます。狂気のアメリカ至上主義者という感じでしょうか?ジェシー・プレモンス演じるリーダー格の男が、本当に恐ろしかったです。その赤い眼鏡、怖いすぎ!

この映画、アメリカ内戦ということと同じくらい、ジャーナリストのこともフォーカスされています。映画を観た後に監督であるアレックス・ガーランドのインタビューを観ましたが「ジャーナリストの仕事は本当に大変で残されるべき」と答えていたので、そこもかなり描かれているのですね。

とにかく、面白い映画でした。

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